2005/6/15
BOTSWANA、FIRE FOXに勝利!
〜 関東フットサルリーグ開幕〜

 6月11日、第7回関東フットサルリーグが開幕しました。
 今シーズンから関東リーグに昇格したBOTSWANA FC MEGUROには知っている選手が何人かいまして、そのプレーぶりを見たくて、さっそく観戦してきました。初戦の相手は、昨シーズン無敗で優勝したFIRE FOX。現在、日本のフットサル界で最強のチームです。

 しかし、試合の予想は結構難しかったんです。
 まず、直前まで行われていたアジア選手権の影響で、数多くの日本代表選手を抱えるFIRE FOXはベストメンバーが組めない状態だったこと。
 そして、両チームの過去の対戦成績。実は、BOTSWANAが対戦成績では上回っているらしい。こういうことって、意外と気になるものなんです。負けた記憶というのは。

 さて試合の方ですが、FIRE FOXが激しい守りを信条とするBOTSWANAからなかなかゴールを奪えずという展開に。すると14、16分に河本、関の両選手が得点し、BOTSWANAが2-0とリードを奪って前半終了。
 後半が開始されると、FIRE FOXがフルスロットルで攻撃を仕掛け、その流れで23分に1点を返し2-1に。FIRE FOXが徐々にBOTSWANAを追いつめていきました。
 ところが、次にゴールを決めたのはBOTSWANA。30分、北原が左サイドでの1対1からコントロールしたシュートを決め、再びリードを広げました。劣勢になりかけていた流れを一気に引き寄せた、貴重なゴールでした。
 その後フィールドプレーヤーをゴレイロに据え、パワープレーで点差を詰めようと試みたFIRE FOXでしたが、持ち前の守備力で耐えたBOTSWANAが無人のゴールにシュートを流し込み、終わってみれば6-2。BOTSWANAは幸先のいいスタートを切りました。

 フットサルは一昨年くらいからチョロチョロ見るようになったのですが、そのきっかけは中学・高校サッカー部のスタッフとして関わった生徒たちが数多くプレーしていたこと。
 現在日本代表にも選出されている稲葉洸太郎は、ボクが暁星中学校サッカー部のスタッフになって初年度の中学3年生です。この年、サッカー部は10年ぶりの全国大会出場と初のベスト8に。半年ほどの短い時間でしたが、この学年にはいい経験をさせてもらいました。その中でも、人懐っこかったのが稲葉選手。あの頃と変わらない彼の姿を見ると、いつも和みます。
 彼は現在、FIRE FOXの中心選手ですが、アジア選手権でケガをしてこの日はコーチとしてベンチで試合を見守っていました。ということで、ボクはBOTSWANAだけ応援してました(笑)

 BOTSWANAは都立駒場高校サッカー部出身者で結成されたチームなのですが、暁星高校サッカー部出身の選手たちが数人所属しています。暁星高校サッカー部OBチーム「森のくまさん」との対戦をきっかけに交流が始まったそうです。こういうのも競技者同士の絆みたいなものを感じて嫌いじゃありません。
 中学・高校時代を知っている生徒たちが、今でもサッカー(フットサル)を続けている。これ、現場に携わる者にとって、結構喜びなのです。
 だから、手を離れた後も、競技スポーツとしてサッカーやフットサルを続けている生徒たちの姿を見るのは、共に戦い、時間を共有した「仲間」として非常にうれしい。陳腐な言葉だけど、それ以外の言葉が思いつきません。

 ということで、元気な後輩たちの姿と最高のゲーム内容を見て、わざわざ府中まで来た甲斐があったと。ちょっとミーハーっぽいですが(笑)

*********************************

 アジア代表として世界選手権の常連になりつつあるフットサル日本代表ですが、日本のフットサル界はまだ本場から学ぶべきポイントを落とし込めていない気がしています。

 テクニックが追い付いていない?いや、足下のテクニックは結構イケてると思います。細かいことを言えばキリはないでしょうが、フットサルにおいて必要とされる「足下の」テクニックは備わっていると思います。
 問題なのは、その使い方。特に「上半身」「パススピード」「ワンタッチ」に差を感じます。たくさん言っても話がとっ散らかるので、「上半身」について軽く。

 昨年8月、スペインリーグの強豪「Playas de Castellon」が来日した際、試合に足を運んだのですが、一番驚いたのは選手たちの異様なまでに分厚い胸板でした。そして、それを強調するかのごとく、細い下半身。実にアンバランス!
 しかし、そのアンバランスとも思える胸板はボールキープの時にいかんなく発揮されていました。ボールを奪いに来る日本の若手たちは、ボールと自分の間に体を入れられ、なかなかボールを奪えませんでした。
 こういうシチュエーションでは、当然ゴールに背を向けてボールをキープしているわけですが、反転できれば相手選手をかわし、一気にゴールへ向かうことも可能です。実際、サイドでの1対1でこのようなプレーを試み、成功していました。

 他にも気付いたことがあります。相手を背負った状態でボールをキープしている外国人選手の足下に、無駄な力が入っていなかったことです。反転する軸が、足ではなく上半身? そう思わせるくらい、反転後の下半身は安定し、次のプレーへスムーズに移行していました。単なる「一歩」かもしれませんが、この「一歩」の違いが競技スポーツでは非常に大きいのです。

 以前、こんなことがありました。大学を卒業してからブラジルに渡った頃、お世話になっていたチームの監督だったヴァギネル(詳しくはこちらを参照)が、「オレからボールを取ってみな」と言ってきました。
 私は、彼の足下にあるボールになんとかつま先でも当ててやろうと、押したり、腕をつかんだりとかなり必死になりました。しかし、全く歯が立たない。彼はボールと私の間に体を入れると、ボールを奪える隙を与えなかったのです。
 その時、強烈なまでの上半身の強さを感じました。特に胸まわりと二の腕の力は半端ではありませんでした。自分で言うのもなんですが、力はそこそこあります。押すだけなら多少自信もありました。でも、まったく歯が立たない!現役を退いて5年以上も経っているのに…

 サッカーやフットサルでは、手を使って相手のユニフォームを引っ張ることはディフェンスの常識です(本当はファールですよ)。
 しかし、ヴァギネルは「そんなことしなくても、ボールはキープできるんだ」と教えてくれました。重要なのは体の入れ方、上半身の力と使い方。もちろん手は使うけど、それは上半身の強さがあって初めて役に立つと。ブラジルでプロとして飯を食ってきた人の言うことには説得力がある。

 ヴァギネルはその時、「15、6歳の日本人選手は体の使い方が下手だ」と言っていたのですが、この指摘はそのまま今の日本のフットサルにも当てはまる気がします。関東リーグを見ている限り、一部選手を除き、上半身の厚みに欠けます。一方、上半身に厚みがある選手は足下が…
 フットサルはサッカーと違い、ショルダーチャージ、スライディングタックルが禁止されていますが、余程ひどい当たり方をしない限り、上半身の接触プレーで笛を吹かれることはありません。相手との接触時にブレない体作りをすること、特に上半身の強化は、攻守での1対1の場面で余裕を持ったプレーをするために必要でしょう。
 もちろん、胸囲だけの問題ではないはずです。ボディビルダーのような上半身も必要ないと思います。ただ、アジアでトップの座を奪い取り、世界とわたり合うには、肉体改造は必要不可欠だと思います。

 ただ日本のフットサル界は、プロとして飯を食ってる選手は数が絶対的に少ないのが現状です。体を作る時間の余裕や資金がある選手は一握り。
 この日のBOTSWANAには、夜中まで接待して寝ていなかった選手もいたとか。それでも全力でプレーし、ベストメンバーではないとは言え、FIRE FOXから勝利をもぎ取ったわけですから評価に値する勝利だったと思います。