2005/7/30
アジアツアーのユナイテッドに、ロイ・キーンを思う
〜 対 香港代表戦をチェック〜

 ユナイテッドのアジアツアーが始まりました。今シーズンから朴智星が加入したユナイテッドが、レアル・マドリードの日本市場での成功に目をつけた…かどうかは分かりませんが、本格的なアジア進出を目指して布石を打ってきました。おそらく来年の開幕直前に韓国を含むアジアツアーが計画されることでしょう。

 さて、某CSでは「MUTV」というマンチェスター・ユナイテッドの試合(過去の貴重な試合も!)やニュース、インタビューなどを放送するプログラムがあります。今回のアジアツアーもその模様が放送されています。今回は、ユナイテッドが日本に上陸する前に、番組内で放送されたアジアツアー初戦、香港代表との試合をさっそくチェックしてみました。

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 前線と中盤の主力メンバーは前後半で入れ替わるトレーニングマッチの意味合いが強い試合でしたが、今回話題になっていたのが、帯同しているクレベルソン(ブラジル代表)の移籍問題。すでに獲得を表明しているクラブがあり、移籍話も進んでいる印象が強いですが、今回のアジアツアーで残留させるかどうか決めようとしているのかもしれません(それとも、単なるポーズ?)。

 そんな話題もありながら、個人的に注目したのが、選手の配置を変更したことです。
 中盤は3人。1人は「中盤の底」で、ディフェンスラインと中盤のギャップを埋め、ゲームをコントロールする役割を担っています。その前には運動量が豊富なMFを左右に2人置き、攻守に絡ませます。
 前線は3人。誰がファーストチョイスかと言うよりは、ゲームプランによって起用する選手を決めるのではないでしょうか。センターフォワードは、ファン・ニステルローイとルーニー。サイドアタッカーは、ギグス(主に左)、クリスティアーノ・ロナウド、朴智星(両サイド可)。このアジアツアーでは中盤のアラン・スミスも本来はFWなので、ケガ人やローテーションも考慮して起用されるでしょう。

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 28日に見たボルトンも同じようなフォーメーションですが、この形で最も成功したのが昨シーズンのFCバルセロナです。
このフォーメーションは前線に攻撃力がある選手を置けるというメリットがありますが、前線5人が守備にも積極的に参加することが絶対条件です。ボールを失うことが多い前線の選手が守備に参加しなければ、ボールを奪った相手選手が攻撃に参加し数的有利を作られてしまいます。DFラインを安定させるには、FWからのプレスが必要なのです。

 今シーズンのユナイテッドは、バルサとは趣は違うものの、前線5人の運動量には問題ないと思います。格下相手とは言え、どの選手も攻撃だけでなく、ボールを失った後の攻守の切り替えがとても早い。もちろん、サボる選手はファーガソン監督が起用するわけもないのですが。

 このフォーメーションでピンと来たことがあります。ロイ・キーンの存在です。
 33歳になったキーンは、ここ数年、シーズンを通して戦える状態ではありませんでした。ケガでフルシーズン活躍するのは無理なのです。
 運動量も全盛期より落ちています。中盤の守備、ゲームメイクだけでなく、ゴール前に飛び出す厄介な存在だったロイ・キーンも、中盤でドンと構えることが多くなりました。今回のアジアツアーはハムストリングのケガを理由に参加していません(監督との対立という噂もないわけではありませんが)。
 いずれにせよ、チームとは別メニューが許されているという意味で、監督からの信頼がいかに大きいかお分かりになるでしょう。アジアツアー中は、残留している若手とともに国内で練習試合をこなしているようです。

 きっとディフェンスラインと中盤の間を埋めるバランサーの役割をロイ・キーンがすることになるはずです。前線からの守備でキーンの負担を減らし、そのゲームメイクの能力を最大限に生かすため、このシステムを採用したと思われるからです。

 ただ、この形にこだわるとなると、惜しまれるのがニッキー・バットをニューカッスルへ放出したことです。キーンの現役生活は確実に終焉へ近づいています。守備力では申し分ないバットは、キーンのバックアップとして絶対に必要だったはず。ディフェンスだけでなく中盤もこなせるフィル・ネヴィルはいますが…守備力ではバットが上でした。

 いずれにせよ、朴智星という働きバチを獲得したこと、アラン・スミスを中盤の底で起用していることを考えれば、「キーン様」をサポートしようという意図ははっきり分かります。
 日本でファンの多いロイ・キーンが来日しなかったのは非常に残念ですが、ロイ・キーンのいないピッチに、今シーズンの姿が見えた気がしました。