2005/8/1
今シーズンのユナイテッド、良さげです
〜浦和レッズ × マンチェスター・ユナイテッド〜

 7月30日、<浦和レッズ×マンチェスター・ユナイテッド>(埼玉スタジアム2002)を観戦してきました。58,000人以上の大観衆。今シーズンのプレシーズンマッチトップの観客動員となりました。
 恥ずかしながら、浦和レッズのゲームを観戦するのは初めて!いやぁ、スタンドがあれだけ真っ赤だと気持ちいいもんですね(笑)

 数日前にアジア遠征のビデオを見ていたので、なんとなくユナイテッドがどういうことをしようとしているかは分かっていました。しかし、生で見ると印象は絶対違いますし、テレビで見た印象に確信を持つ意味でも、今回の観戦は意義があったと思います(先輩、誘ってくれてありがとうございます 笑)。

〜アラン・スミス、変貌す〜
 先日書いた通り、今季のユナイテッドは中盤から前線の構成を変えていました。
 3トップ(中央と両サイド)の後ろに2人のMF。その後ろに、その5人をカバーするMFを配置(分かりやすく、中盤の底と言っておきます)。

 今回のアジアツアーで、本来FWのアラン・スミスを中盤の底に置くテストは完了したと思います。
 相手が格下とは言え、アラン・スミスの守備能力は非常に高く、「痛いところに手が届く」プレーを見せてくれました。
テクニック、パス精度の高さはもちろん、相手選手のプレッシャーを受けた時にボールを失わない術も分かっていました。視野が広く、周りをどう生かすかもよく分かっています。あんなに簡単にボールをさばけるとは全く想像していませんでした。
鹿島戦でも同じポジションで後半から出場していましたが、この試合ではかなり楽している印象を受けました。楽をしていた理由は後ほど。

 このポジションの選手がボヤけている試合は、ユナイテッドが劣勢の時。実際、28日の鹿島戦(1-2で敗戦)では、なんとか同点に追い付こうとかなりハードにボールを奪いに行っていました。「今のレッドカードだよね?」というスミスらしい場面もありつつ(笑)
 その点では、後半レッズの新外国人ロブソン・ポンテが入った時にファールが増えたのはうなずけます。やはり、巧い選手がトップ下に入った時、スミスがどういうプレーをするか。この辺りは公式戦で見てみないと分かりません。ただ、彼が近い将来ユナイテッドの中盤を仕切る可能性は高いと言っておきます。それくらいセンスのある選手だということを確信しました。

〜ハードワークなユナイテッド〜
 アラン・スミスが楽をしていた(?)ことには、ちゃんと理由があります。それは、ユナイテッドの前線と中盤の5人の選手が、前線から相手ボールを追いかけまわし、ボールを持つレッズの選手のパスコースを限定し、攻撃の起点を作らせないようにしていたことです。
 これを「守備」と表現すべきかは分かりません。どちらかと言えば、「ボールを奪うための攻撃」。DFはもちろん、MF、FWもこの「攻撃」に参加します。これはアレックス・ファーガソン監督が築き上げてきたユナイテッドの伝統みたいなもので、この試合でもその「攻撃」をいかんなく見せてくれました。

 浦和の選手たちが消極的だったとか、ユナイテッドのスターたちを恐がっていたとは思いません。積極的に攻撃を仕掛けようとしていましたし、FW永井はドリブル突破で何度もチャンスを作っていました。しかし、攻撃はどれも単発で終わってしまいました。
 これは、ユナイテッドの選手全員の守備意識の高さから、DFはもちろん、中盤の選手ですら攻撃参加を控えざるを得なかったからです。リスクを冒して前に出れば、ボールを奪われた時に必ずそのエリアを使われる。
 そんな中、特に際立っていたのが、FWルーニーの守備意識の高さです。「自分が失ったボールは必ず取り返す!」という気合いが感じられ、実際に失ったボールを奪い返す場面は何度もありました。ファールになってしまうケースも多かったですが、そこで流れが止まればOK。時間を稼げれば、守備の陣形を整えることができます。
 こういった見えないプレッシャーが、浦和の選手たちの足を前へは動かせなくしていたような気がしてなりません。

〜「才能」と「忍耐」〜
 ルーニーのゴールを目の前で見られたのですが、2点目のループシュートは見事でした。何が見事って、このゴールには、次のような要素が含まれていたからです。

(1) ドリブルでの突破力
(2) ボールを失わないキープ力
(3) マークが甘くなった時にゴールとGKの位置を見られる状況判断の良さと冷静さ
(4) ボールをゴールに入れるためのシュートのイメージと選択肢
 そして、
(5)全てを実現するためのボールテクニック

 あのゴールには、この全てが集約されています。それを無意識でやってしまうわけですから、ルーニーって化け物です。まだ19歳でありながら、イングランド代表に欠かせない存在…彼を見ていると「才能ってあるんだな」とつくづく思います。

 一方、この日は出場しなかったファン・ニステルローイ。彼は今でこそサッカー界で知らぬ人がいない世界的なストライカーですが、意外と遅咲きです。PSVに移籍した98/99シーズン、34試合31得点を決め一気に注目されたのが22歳の時。活躍が期待された99/00シーズンは右膝靭帯断裂したばかりか、母国開催のEURO2000(欧州選手権)に間に合わず、決まりかけていたマンチェスター・ユナイテッド入りもご破算に。
00/01シーズンにケガを克服し復活し、2001年7月に念願のユナイテッド入りを果たしましたが、決して順風満帆なサッカー人生ではありません。いわば「忍耐の人」。

 「才能」と「忍耐」が同居するユナイテッド。この2人がタイトル奪還のカギを握っていることは、誰でも分かることですが、ま、あえて念押ししておきます。

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 この他にも目を奪われたのは、クリスティアーノ・ロナウドのテクニックとスピード。とにかくフェイントが早い!スピードもずば抜けています。

 あとは、どの選手にも言えることですが、ボールを持っている時のフェイント。ボールを持ちながらフェイントすることに、色々な意味が含まれていて、興味深かったです。
 フェイントとは「相手の逆をとる」ためのものですが、それが「相手をかわした後」を考えたものだったことに感心しました。フェイントした後にどんなパスを出そうか、ドリブルしようか、それとも…と、様々なイメージが見ているボクにも浮かんでくるのです。
 もちろん、そのフェイントがイメージ通りに行くわけがないのですが、それでも落ち着いて次のプレーを考えながらボールをキープしている。簡単にはボールを奪われない…ボールを持っている時の基本がこれでもか!と詰まっていました。まだまだ学ぶべきことが多いですね、海外の一流どころからは。

 この日、一番のお目当てだった朴智星が28日の鹿島アントラーズ戦で顔に裂傷を負いお休み。調子が良さそうだったのでぜひ見たかったし、どれだけ馴染んでいるかも分かったはずなのに。それだけが唯一の心残りでした。
 ま、8月9日か10日にUEFAチャンピオンズリーグ予備予選3回戦があるので無理しても仕方ないし、このアジアツアーで十分戦力になることは分かったと思います。

 相手がJリーグのクラブとはいえ、8月9日にはUEFAチャンピオンズリーグ予備予選を控えているマンチェスター・ユナイテッド。昨シーズンはリオ・ファーディナンドが長期出場停止中で、ロイ・キーンがセンターバックを務めたほど人がいなかったのですが、今シーズンは期待できるのではないでしょうか。戦力は整っていると思います。期待大です。

 最後に。ユナイテッドが獲得して話題になった中国人の董方卓(20)は、おそらく今季もユナイテッドではプレーしないでしょう。中国代表歴がないので、就労ビザが下りないはず。
 でも、ユナイテッドが350万ポンドを払ってまで獲得した選手。どう化けるのか、それとも…ある意味、要注目。