2005/8/17
チェルシー、最低で最高のスタート
〜ウィガン・アスレティック×チェルシー〜

 開幕戦の翌日、8月14日(日)、昨シーズンのプレミアリーグチャンピオン・チェルシーが、アウェーでプレミア初昇格のウィガン・アスレティックと対戦しました。

 先発は、GKツェフ、DFパウロ・フェレイラ、ギャラス、テリー、デル・オルノ、MFマケレレ、ランパード、グジョンセン、FWロッベン、ダフ、ドログバ。
 このうち、新戦力は左SBデル・オルノ(アスレティック・ビルバオ⇒)のみ。後半から出場したショーン・ライト・フィリップス(マンチェスター・シティ⇒)と、ACミランからの出戻りエルナン・クレスポを合わせて、新戦力は3人。色々言われるチームですが、昨シーズンと比べてそれほどメンバーは変わっていません。
 あれだけクオリティの高いサッカーを実現したわけだから、あえてメンバーを変える必要もありませんし。

  ただ。
 「ちょっとおかしい?」
 試合を見ての感想です。

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 確かに、ウィガンは善戦しました。
 自陣内に引いて守りを固め、ボールを奪ったら素早くカウンターでゴールを襲う、典型的な「格上 対 格下」の図式でしたが、オフに獲得したプレミア経験選手を中心に(CBアンショズ、デ・ゼーウ、FWアンリ・カマラ、ロバーツ)、何度もチェルシーゴールを脅かしました。
 結局クレスポが決勝点を入れたのですが、ゴールが決まったのは後半ロスタイム。ハイボールをドログバが落とし、そのボールを拾ったクレスポがフェイントで相手をかわして、左足で見事なシュートを決めました。あと一歩で勝ち点を逃してしまったウィガンでしたが、その戦いぶりは初昇格と思えないほど堂々としたものでした。期待していいでしょう。

 しかし、チェルシーの出来は悪過ぎです。
 開幕戦、昇格チーム、前週のコミュニティ・シールド(昨シーズンのリーグチャンピオンとFAカップチャンピオンとの試合)での対アーセナル戦の勝利と、「緩む」要素は多々ありました。しかし、それにしては、チームのテンションに疑問を感じざるを得ませんでした。
 一番しっくり来なかったのがランパード。ラストパスの閃きを感じないのはいい方で、彼の売りである運動量が少なく、動きの質にも不満を感じずにはいられませんでした。どうもコンディションが整っていないような気がします。

 その他、ダフやロッベン、ドログバと、昨シーズンの主力組のパフォーマンスがあまりにも低調でした。
 ダフとロッベンに関しては、ドリブルで相手を撹乱しながらも、最後の仕上げ(クロスやシュート)が「えーっと…」と頭を掻きたくなるものばかり。集中力を欠いていた気がします。
 ドログバはボールが足下につかず、ウィガンの選手たちにいいようにボールを奪うターゲットにされていました。決勝点のヘディングでの落としはドログバの高さが生きたのですが…

 これだけゲーム内容が悪いながらも、1-0で勝ちきれるあたり、チェルシーにも底力がついてきた気はします。ただ、来週のアーセナル戦に向けて、不安を残す結果となったのは間違いありません。

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 スポーツ全般に言えることですが、ディフェンディングチャンピオンが次のシーズンも優勝するケースは少ないと言えます。
 もちろん、どの世界にも連覇はありますし、主力選手の若さによっては3連覇あたりまではありえます。NBAで言えば、マイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペン、デニス・ロッドマンを擁したシカゴ・ブルズ。シャキール・オニール、コービー・ブライアントにフィル・ジャクソン・ヘッドコーチを擁したLAレーカーズ。こういったチームが頭にすぐ浮かびます。
 しかし、この両チームに共通するのは、看板スターの仲が悪くなったり、わがままを言うようになったりで、チーム内がゴタゴタして必ず空中分解すること。同じ顔ぶれでチームのテンションを何年も維持していくのは至難の業なのです。

 この問題は、団体スポーツの最も難しいところです。
 モウリーニョ監督は、前任のFCポルトで国内リーグ2連覇、UEFAカップ制覇(2002-03シーズン)、UEFAチャンピオンズリーグ制覇(2003-04シーズン)という偉業を成し遂げましたが、これは3シーズンでのこと(実質的には2.5シーズンくらい)。
 そして、今のFCポルトは…
 当時の主力選手はほとんど残っていません。モウリーニョ監督とともにチェルシーへやって来たリカルド・カルバーリョ、パウロ・フェレイラをはじめ、FCバルセロナに移籍したデコ、ロシアへと旅立ったデルレイ、マニシェ、コスティーニャ等、ヨーロッパチャンピオンの面影はまったく残っていません。

 結局のところ、チーム内の新鮮さを保つには、主力メンバーを少しずつ入れ替えながらチーム内に緊張感を保つという方法しかないような気がします。そういう点では、ACミランやユベントスは戦力のリフレッシュを上手くやっているのではないでしょうか。

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 果たして、チェルシーはどうなるでしょう。フランク・ランパード、ジョン・テリーを中心に、レギュラーはほぼ固定されています。代表クラスの選手でも先発はおろか、ベンチ入りさえできない状態です(プレミアリーグはベンチ入り5人と少ないのもその理由)。

 この現状を打破すべく、ベンチ入り当落線上の選手が次々と移籍していきました。
 完全移籍はスコット・パーカー(⇒ニューカッスル)、ケジュマン(⇒アトレチコ・マドリード)、ティアゴ(⇒リヨン)。今シーズンのローン移籍が、スメルティン(⇒チャールトン)、ヤロシク(⇒バーミンガム)。あれ、他にもいたかな…
 プレミア制覇に貢献したバックアップメンバーたちは、来年6月のFIFAワールドカップ ドイツ大会の出場という目標のために、試合に出場できる可能性の高いクラブへ移ったわけです。プロとして当然の決断です。

 現在のチェルシーのファーストチームは、GK3人、DF8人、MF9人、FW4人の合計24人。各ポジションに2人のバックアップを揃え、理想的なチーム構成になりました。
 しかし、そんなに上手くいくとも思えません。主力選手に必ずケガ人が出て、勝ちきれないゲームが続く時期もあるはずです。まあ、1月の移籍マーケットが開くまで我慢できれば、また補強するでしょうが(笑)