2005/2/5
ファンクと日本語ラップの幸せな出合い
〜 マボロシ - ワルダクミ 〜

 最近、衝動買いをしてしまった「マボロシ」のファーストアルバム。日本ヒップホップ界の草分け的存在・RhymesterのMummy-D(坂間大介)と、Super Butter Dogの竹内朋康が組んだユニットですが、気に入っています。

 出会いは、たまたま車で聴いていたJ-WaveのGROOVE LINE。「ワルダクミ」と「ファンキーグラマラス Part2」がかかった(と思う)のですが、ラップとファンクが同居したカッコいい仕上がりだったので、他の曲が気になりました。そこで、ラジオを聴いてすぐ、車で渋谷のレコードショップに向かい、視聴しました。
 感想?「これ買い」。即お買い上げ。

 元々Super Butter Dogが好きという前提がありました。特に竹内氏のギターサウンドは非常に気に入ってました。竹内氏の余計なエフェクトをかけないクリーンなギターサウンドと、シンプルなリフとカッティングは、心地よいの一言。
 以前DJで夜な夜なクラブに出没していたので、何度か聴きに行ったこともあります。選曲がいいんですよ。ちょうど自分の中でファンク熱が高まっていたこともあり(George Clintonの来日公演を見に行ったせいで)、かなり入れ込みました。

 残念ながら、Super Butter Dogのメンバーは個人活動中で、ソロアーティストとして認知されたハナレグミ(永積タカシ氏)、キーボードの池田貴史氏が100sに参加と、グループとしての活動はしばらくお預けだったので、竹内氏のこうした活動は一ファンにとってはありがたきかな。

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 突然ですが、ボクはベストヒットUSA世代です。と言っても、若い人には分からないんだろうなぁ。まぁ、いいや(笑)
 いわゆる80年代のビルボードチャート、MTV全盛時代に音楽を聴き始めたものだから、90年代から始まったブラックコンテンポラリー〜ヒップホップといったブラックミュージックの流れにはどうも拒否感がありました。ラップ、ヒップホップは、その象徴みたいなものです。Run-DMC、Beastie Boysまでは許容できましたが、MC Hammer以降は…

 でも、年を取るのはこだわりががなくなるということなのか、ちょっと気になり始めてます。
 純粋なラップとは言えないですが、Dragon Ashの「Let yourself go, Let myself go」をCMで聴いて、その心地よさに思わずアルバムを買いに走りました。もうかなり前の話か。
 「DA・YO・NE」に始まり、Dragon Ashのヒットで、日本のヒップホップシーンもポピュラーな存在になりました。
 ただ、ラッパーと呼ばれる人たちの見た目が…。だって、アメリカで流行っているアーティストのマネでしょ?別に体格が良くなければならないわけでもないし、アメフトのユニフォームを着なくてもいいわけです。個人的には見た目で判断しない方だとは思いますが、洋楽のマネばかりしていた80年代の日本人アーティストに似ていて、聴く気が失せてしまうのです。

 歌詞…もといライムも、言葉を見てみるとありきたりな印象を受けます。風情は尖っているのに、演歌?と思わせるようなライムが多い。みんな元々グレていたようで、歌詞もそんな感じのものばかり。ライムをリズムだけ聴かせるという割切りが見られれば聴いてても不快ではないんでしょうが、なんか凄んでるだけの姿が違和感を覚えてしまったのも確かです。夜の渋谷で遊んでいる人はリアルなのかもしれませんが、リスナーは限定されてしまいます。ボクは、夜危ないので家にいます(笑)

 ただ、スゴんでたように見えていた日本のヒップホップシーンの印象を変えてくれる人が出てきました。YOU THE ROCK☆とZEEBRAです。
 YOU THE ROCK☆は深夜番組に登場したり、CMに起用されたりと、音楽の活動よりも等身大の人物像をお茶の間に植え付けてくれました。曲は別として(笑)
 ZEEBRAに関しては、頻繁にTVに出演したことで、誤解していたことに気付きました。NHKの「TR」出演時にはライムへのこだわりがよく分かりました。「タモリ倶楽部」にも出演したり、他の番組では奥さんと子供を紹介したりと、かなり砕けた感じ。確かキングギドラの活動で物議を醸した後だったから、余計それを感じましたし、もっと素で勝負すればカッコいいのにと思ったものです。

 今の国内の音楽シーンは、海外アーティストのマネから、それを消化したものが生まれてきています。学生時代には洋楽しか聴いていなかったボクは、最近洋楽よりも邦楽の方が面白い。
 きっとこれからオリジナリティが生まれてくるんでしょうね、日本のヒップホップシーンも。リップスライムやケツメイシなど、ヒットチャートを賑わすヒップホップには、日本人の「心の流れ」が表現できているものが多い。今後どんなものが出てくるのか、期待しています (^_^)

 さて、前置きが長くなりましたが、「ノリの良さ」で買ったはずのこのアルバムのライムには、シニカルさが見え隠れしていました。
 オープニングの「泥棒」では、サンプリングで音を作り出す自分たちを「音楽泥棒」と言ってしまいます。その他の曲では、わざと滑稽に見せたり、力んでみたり。ポップなのに政治色バリバリな曲があったり。その押しと引きには、結構参ります。普段ラップは聴かないのですが、言葉の選び方、リズムへの乗せ方の上手さは目からウロコでした。

 でも、マボロシの良さは、ライムとギターサウンドの融合。しかもファンキーと来たら、そりゃあ、踊るしかない(笑)
 ありそうでなかった感じじゃないでしょうか。これ、バンドスタイルでやったら面白いと思うな〜。チャートアクションは別として、いいものはいい。少なくとも、これはすごくいいです。