2005/7/15
「未知なる大物にハマる」の巻
〜 Dave Matthews Band - DMB Live Trax Vol.2 〜

 日本ではきっと見られない。見られたとしても、2,000人から3,000人のホールクラス?
 昨年結成40年目にして初来日を果たしたTHE WHO。彼らの来日が実現できたのは、フェスティバルでの出演であったことと、ヘッドライナーにAEROSMITHという日本で絶対的な人気を誇るバンドの存在があったから。高額なギャラにも関わらずTHE WHOの来日が実現できたことには理由がありました。
 タイプは全く違いますが、ドラッグ問題やらなにやらで結局来日が実現しなかったGRATEFUL DEAD。同じように、アメリカでは絶大な人気があっても、日本ではさっぱり。こんなバンドは結構います。

 今その代表格にあるのが、Dave Matthews Band。アルバムをリリースすれば、アメリカ国内では必ず1桁台で初登場する大物であり、ツアーが始まればアリーナクラスの会場をフルハウスにしてしまうライブバンドでもあります。
 5月にリリースされた3年ぶりのスタジオアルバム「STAND UP」は、ビルボードアルバムチャートで初登場1位を獲得。アルバムに合わせた全米ツアーも軒並みソールドアウトのようで、相変わらずの人気ぶりです。
 しかし…全米ナンバーワンのアルバムにもかかわらず、日本でリリース予定はありません、今までのアルバム、余程売れなかったんでしょうか?とうとう日本盤のリリースがなくなってしまいました(そのうち、またリリースされるとは思いますが…)。

 Dave Matthews Bandは1991年に結成され、メンバーは5人。このバンド、編成がちょっと変わっています。ギターを兼務するボーカルのDave Matthewsにドラム(Carter Beauford)、ベース(Stefan Lessard)…とここまでは普通ですが、あとの2人はサックス(LeRoi Moore)とバイオリン(Boyd Tinsley)。なんとも歪な編成です。
 ライブではサポートとしてキーボード(Butch Taylor)が同行していますが、音を前面に出さず、あくまでも5人の音を大事にする控えめなプレーが多いです。

 と、ここまで解説しておきながら、先日、初めてDave Matthews Bandの音源を購入しました(笑)
 これまで何度もアルバムを購入しようと思ったものの、視聴する度に地味な感じがして、レジまで持っていくことはありませんでした(笑)
 今回購入したのは、昨年(2004年)9月12日、サンフランシスコのGolden Gate Parkで行われたライブを収めた「DMB Live Trax Vol.2」。全20曲、約3時間に及ぶ長丁場のライブアルバムです。

 今回購入したきっかけは、FLAC形式でダウンロードして聴けるということが分かったから(^_^;
 人間、慣れはコワイ。

 さて、聞き所なんですが、オープニングからアンコールまで一気に聴けてしまいます。結構ハマっちゃいました。
 あえてお勧めするなら、3〜4曲目の約13分間、「So Much to Say >> Anyone Seen The Bridge」「>>Pantala Naga Pampa >> Rapunzel」。この流れは見事です。
 Dave Matthewsのアコースティックギターが奏でる軽やかなリズムとタイトなリズム隊。そこに絡むバイオリンとサックスの一糸乱れぬプレーに、ライブバンドとしての真価を感じられるでしょう。

 ライブの後半でカルロス・サンタナがゲストとして招かれますが、プレーの出来はよくありません。それよりも、今まで耳にしていなかったDave Matthews Bandの楽曲の良さを楽しむべきでしょう。彼らのライブは同じセットリストが存在しないのも特徴ですが、選曲はベストに近いものになっています。新曲も数曲入っていますが、違和感はありません。
 もちろん、スタジオワークにはないライブならではのアレンジが見事にハマってます。観衆の歓声・大合唱というライブの醍醐味もそのままパッケージングされています。
 初心者でも十分楽しめまる…いや、むしろスタジオアルバムより、ライブアルバムから入っていった方がいいと思います、このバンドの場合。実は、「地味」だと言っていたのはスタジオアルバムでして…(苦笑)

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 彼らのライブのお楽しみは「唄」だと思いますが、ジャムバンドとしての即興的な要素も大きな魅力になっています。
 特に気に入ったのが、音のタイトさ。ジャムバンドというとルーズとか変則リズムというイメージがあるんですが(単なる偏見です)、このバンドは演奏が結構ジャスト…曲によってはやや突っ込み気味でドライブ感があります。
 渋滞に巻き込まれても、これを聴いていると意外とイライラしません。ハンドルを持つと人格が変わるドライバーにはもってこいです。

 あと、サウンドのユニークさという意味で注目したいのが、ドラムのCarter Beaufordがダブルキックペダルを使っていることです。
 メタルバンドではよくツーバスをドカドカやりますが、ジャムバンドでバスドラを頻繁にドカドカ鳴らすのは珍しいのではないかと。そして、このリズムがバンドのプレーを煽り、タイトで息の合ったジャムになっていくとなれば…
 アメリカのジャムバンドが好きかどうかは別として、長年にわたって売れ続けるバンド、しかもライブで人を呼べるバンドには、必ずその理由があります。そして、その理由はこのライブアルバムで分かります。

 だからと言って、日本で見たいとは思いません。特にフェスモノには出てほしくありません。ZZ TOPやSteve Winwoodのように、広い会場に数えるほどのオーディエンスしか残らないような状況は見たくありませんから。
 後になって音楽誌に「良かった」とか書かれても、なんの足しにもなりません。それは数少ない日本のDave Matthews Bandファンにとって、そして当の本人たちにとって、とても不幸です。

 見に行きたい人は、迷わずアメリカに行きましょう。オープンエアで、のんびりと見られる会場なら最高でしょう。
 毎年のように行われる夏から秋にかけての全米ツアー。一度行ってみたいものです。

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 このアルバム、オフィシャルサイトでダウンロードすると、FLACが17.99 USドル、MP3・256kbpsが14.99 USドル、MP3・128kbpsが13.99 USドルで手に入ります。
 ちゃんとCDもリリースされています。オフィシャルサイトでは19.99 USドル。これを空輸するとプラス輸送料金もかかります。輸入盤として入ってきている店もありますが、4,000円近くしたので、ダウンロードが一番安価に手に入れる方法です。

 人間が何かにハマる時、「簡単」とか「安い」というのがキーワードになる。そんな典型的なパターンにハマっている今日この頃です(笑)