2005/9/9
多い! もう一杯!
〜 The Rolling Stones - A Bigger Bang 〜

 先日発売されたThe Rolling Stonesのニューアルバム「A Bigger Bang」を購入しました。
 iPodユーザ(しかもMacユーザ)のボクは、残念ながら日本盤が購入できないので、US盤を待ってました。
 この1週間、長かったな…(日本盤は全世界で1週間早い8月31日リリース済み)

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 さて、今回のアルバムは1997年にリリースされた「Bridges To Babylon」から8年ぶりのスタジオアルバムです。でも、そんなにブランクがあった気がしない…
 その理由を考えてみると、実に簡単。日本に来るわ(その度、騒ぐわ 笑)、ベスト盤にライブ盤(いらないだろ、それというものも含め)、揚げ句の果てには旧譜のハイブリッド盤(音がいい!)が出るわ、ミックもソロアルバムをリリースするわ。何かとお騒がせだったのです。

 「Four Flicks」というDVD4枚組も出ました。これは、40周年記念ベストアルバムに合わせて行なったワールドツアーの模様を収めたものですが、これが実は曲者。
 「Theatre Show」(数千人クラスの小規模会場)、「Arena Show」(数万クラスのインドアアリーナ)、「Studium Show」(5万前後のスタジアム)と、会場規模によってセットリストを大幅に変えていたのです!(日本では「日本武道館」「横浜アリーナ」「東京ドーム」という3会場で実現。全部行きました…)
 そして、このDVDはそのライブの全貌をほぼ収録した、ファンは涙なくして見られない代物。加えて、ツアーが始まるまでの舞台裏を収めたドキュメンタリーまで入っていたら…14,000円だろうと即購入(笑)
 哀れなり、ストーンズファン。

 こんなわけで、「8年も経ってたっけ?」と改めて「?」マークが頭に浮かんでいるわけです(笑)

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 前置きはこの辺にして、内容の方ですが…
 全盛期の60〜80年代初頭(Tattoo You)以降については評価の分かれるところです。
 「あの頃は良かった」的な音楽の聴き方をしている方なら、それ以降は最初から「ナシ」でしょう。
 ただ、ボクのように「Dirty Work」(1986年)以降にファンになった若造(と言っても、もう20年!?)には、最近の作品にもあまり不満はありません。

  ミックとキースの仲違いで分裂しかけていたストーンズが再び絆を取り戻した「Steel Wheels」(1989年)は結構好きで、過去のアルバムの中でもよくできた作品だと思います。収録曲のクオリティとともに、アルバムのバランスが非常にいい。ややコンテンポラリー過ぎるきらいはありますが、嫌いではありません。
 純粋なスタジオアルバム、「Voodoo Lounge」(1994年)、「Bridges To Babylon」(1997年)についても、ストレートと変化球をうまく配球して、結構楽しめました。コンテンポラリーな感覚を持ち合わせているミックと、ワンパターンだけどそれがえらく鋭い武器だったりするキースがうまく融合していた気がします。

 …ただし。
 曲が多すぎる!そして今回は、なんと16曲!(笑)

 これが「Voodoo Lounge」以降の評価を難しくさせているポイントだと思います。曲が多いことでアルバムにまとまりがなっているというか、通して聴く気になれなくなるというのが最近のパターン。
 曲数から考えれば…今回も!? ファンとして非常にあるまじき問題です(笑)

 さて、ニューアルバムですが、何度も聴きました。曲のクオリティ自体はどこから切ってもストーンズなので言うことはないし、ライブを意識したシンプルな曲が並んでいます。ファンとして、不満はそれほどありません。
 ただ、1枚通して聴くには、似ている感じというか、起伏がなだらかというか…

 これについては、曲数を絞ればもっとタイトにインパクトのある仕上がりだった気はします。どの曲とは言いませんが、数曲は曲調が同じと感じるものもあり。
 そういう曲は、シングルのカップリングでも良かったような…。そうすれば、シングルのクオリティが高くなったのではないかと。そして、逆にシングルのお値打ち度が上がり、ボクのようなファンは追いかけ甲斐があると(笑)
 商売上手なストーンズなら、それでも良かったのではないか。そんな疑問が頭に浮かんでいます。

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 全盛期には1枚のアルバムを作るのに数十曲の中から選ぶ(曲のアイディアも含めて)くらいマテリアルを揃えていたストーンズ。揚げ句の果てに、寄せ集めで作った「Tattoo You」が全米No.1になったり、ファンからは好評だったりしたわけですから、曲のアイディア、マテリアルの豊富さは恐るべしです。
 それでも、まだ日の目を見ていない音源が多いストーンズが、あえてお蔵入りのマテリアルに手を付けなかったり、後回しにしたのは、作った時点、思いついた時点でフィットしなかったからでしょう。アルバムを聴く限り、「Steel Wheels」までのアルバムは、アルバム全体のバランスを考えた構成になっているのです。
 この傾向が変化したのが「Voodoo Lounge」から。プロデューサーがDon Wasに変わって、曲数は15、13と増加し、今回はついに16に。

 この「曲数の増加」という減少は、レコードの時代からCDの時代へ完全に移行し収録時間が増えたということ、「A面・B面」という2度のクライマックスを作る必要性がなくなったことに起因しているような気がします。そして、これがボクにとって「1枚通して聴くには…」という気にさせてしまう原因になっている気がしてなりません。

 でも、ちょっと考え過ぎかな…。何度も聴いていくうちに、そんな気がしてきました。
 アルバムとしてトータルな感じを出すのではなく、できたものをそのままパッケージングする。現時点でのバンドの熱をファンにさらけ出し、「好きなの選んでくれよ」と潔く言ってしまう感じ。
 それに、20代半ばの大人だって、もうレコードを知らない世代なんだよなぁ(苦笑)

 そんなことを思いついた瞬間、「できたものを提供する」というスタンスもありなのかもという気になってきました。
 バランスを考えたら、絶対10〜11曲に絞った方がより強力になったと思います。でも、きっとそんなことも分かっていて、「気に入った曲を聴けばいいじゃない?好みはみんな違うんだから」と笑われそうな…
 ストーンズが相手にしているのは、10代から60代まで(それとも、もっと上?)。それこそ三世代を相手にロックし続けているわけだから、これまでの常識は当てはまらないんだろうし、ボクが考えている常識なんてレンジが狭いんだろうな。

 なんだか、そんな余裕を見せつけられるアルバムです、と今の段階では紹介しておきます。
 感想は、これからどんどん一ファンのミーハーな感じに変化していくはずなので、冷静なうちに真面目に書いてみました(笑)

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 気に入った曲ですが、

 「そう、これこれ」という感じの「Rough Justice」(1)、「Look What the Cat Dragged In」(14)。
 どこかで聴いた感じだけど、ギターのリフが印象的な「Rain Fall Down」(4)。
 サザンロックというか、久々に泥臭いのやりましたね、と思わずニッコリしてしまう「Back of My Hand」(6)。
 今回のキースは「Infamy」(16)で決まり。

 こんな感じです。だからと言って、結構どの曲もストーンズなので、気分によって聴きたい曲は違ってます。まずまず、いい傾向です。

 8月21日、ボストン・レッドソックスのホームグラウンド、フェンウェイ・パークからスタートしたワールドツアー。来年の「いつもの時期」には来日公演が実現するようです。
 これを聴いて、全米ツアーのセットリストをチェックしつつ、しばらくストーンズモードに入ることでしょう。数年周期のボクのライフサイクルです(苦笑)