2005/11/11
いつも「アルバム」に求めているもの

 もう20年近く前のこと。確か、中2の秋。同級生に、ある「曲」を聴かされました。
 ピアノの早引きから始まり、スネアのタイトなリズムが絡んでくるその曲を聴いた瞬間、ボクは衝撃を受けました。安っぽいですが、「衝撃」以外の言葉が浮かびません。
 この「曲」とは「Runnnig On Ice」。Billy Joel「The Bridge」(1986年)のオープニングを飾る曲です。そして、この3分19秒の出会いが、その後の人生を狂わせることに…

 全く音楽を聴かないわけではありませんでした。小さい頃から姉の聴いている流行りものを横で聴いていたし、売れ始めたレベッカ、デビューしたばかりの渡辺美里を聴いていました。
 しかし、そんなものがぶっ飛ぶぐらいたまげました。アルバムを借りてカセットテープに入れて何度も聴きましたが、結局CDを買いました。

 これ以降、ボクは洋楽にドップリのめり込み、すでに20年が経とうとしています。
 渋谷のタワーレコードが、まだ渋谷ビデオスタジオのすぐ側の雑居ビルの2階でひっそり営業している頃…輸入CDが、クラシックコーナーと大して変わらないほど、店に申し訳程度しか置いていなかった時代から通い詰めました。CDという新しいメディアだけでなく、輸入盤がまだ珍しかった80年代半ばのことです。

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 この「The Bridge」、日本で初めて、レコードより先にCDが発売されたアルバムです。これを境にCDのシェアは急激に伸び、1988年にはレコードの生産を追い抜くことになります。
 しかし、CDが世を席巻するに至る前、ちょうど90年代に入った頃までは、アルバムはおよそ40〜50分のもので、レコードというフォーマットに収録できる形で制作されていました。
 「The Bridge」も同じです。だから、Ray Charlesとのデュエット「Baby Grand」でA面が静かに終わり、ビッグバンド風(そのものか 笑)の「Big Man On Mulberry Street」でB面のオープニングが幕を開けるという流れができていました。

 基本的に、日本の音楽シーンと海外ではアルバムの作り方が異なります。
 日本では、シングルをリリースし、何枚か貯まるとアルバムをリリースし、そこにシングル曲を収録します。これは今でも(基本的に)変わりません。
 60年代のアメリカでも、同じような形態でアルバムは作られていました。しかし、The Beatles「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」を代表として、アルバムのトータル性が重視されるようになると、アーティスト活動のメインはアルバム制作に移行していったのです。

 話がそれましたが、CDの出現で、2枚組のレコードが1枚のCDに収まるようになったわけですが、作品としてのトータル性はどうでしょう?ボクは、明らかに失われたと思います。曲数も収録時間も増えましたが、作品を垂れ流しているだけ?と思ってしまうことはよくあります。
 人間が集中できる時間は、(もちろん個人差はありますが)MAX1時間くらいのもので、だいたい学校の授業と同じくらいです。駿台予備校は、確か45分授業(笑)
 この制限された自由の中で、それを十二分に生かすために考えられていたレコード制作。レコードというフォーマットは、「アルバム」と呼ばれるアートを最大限に引き出してくれた気がしてなりません。

 音楽理論はよく分かりませんが(笑)、プロが作ったものを聴くのは素人。ボクもその一素人として、一音楽ファンとしてこれからも音楽を楽しんでいきたいと思っています。だから、2,000〜3,000円出して購入するアルバムには、それなりのクオリティを求めたいし、アルバムが流れている時間だけは気持ちよくすごさせてほしい。そう考えています。
 だから、アルバムはトータルとしてどれだけ楽しめるか。これを重視しますし、その姿勢(?)は変わらないことでしょう。

 基本的に好みでないものは紹介しません。ボクには、それを楽しめるキャパシティがないと思うので(笑)
 そんなワガママに付き合ってもらい、もし「聴きたいな」と思っていただけるものがあれば幸いです。こういうわけで、アルバム紹介については、トータル性を重視していこうと思っています。